【11/1追記 公式ガイドライン公開】グリッドマンの二次創作が実質禁止に?なぜ円谷プロダクションは著作権に厳しいのか
先日から今期アニメの台風の目となっている『SSSS.GRIDMAN』であるが、この盛り上がりを牽引しているのはおそらく宝多六花と新条アカネという2人のヒロインの魅力ではないだろうか。
キャラクターに人気が集まればそれに伴って二次創作も盛り上がるというのが、SNS社会と化した現代では当然の流れになっている。そこでとある同人作家が有料サイトにてこの作品の二次創作を公開していたところ、公式から停止するようにとの警告が届き、それに従う形で公開を停止したことが話題になっている。
公開停止となった理由
【重要なお知らせ1】
— ピジャ(ピアニッシモ) (@pjaniishimo) 2018年10月29日
先日ファンティアとFANBOXにて公開させて頂きましたグリッドマンの漫画に関して、権利元様から金銭の発生する場での公開を停止するよう警告をいただきましたので、非公開とさせていただきます。
権利元様とご支援頂きました皆様にはご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした
【重要なお知らせ2】
— ピジャ(ピアニッシモ) (@pjaniishimo) 2018年10月29日
サイトにて公開しておりました漫画は、確認が取れ次第問題なければツイッターなどの特に金銭の発生しない場で改めて公開できればと思っております。
こちらの漫画を目当てでご支援いただきました方々には大変申し訳ありませんが、ご了承のほどよろしくお願い致します。
【重要なお知らせ3】
— ピジャ(ピアニッシモ) (@pjaniishimo) 2018年10月29日
お知らせは以上になります。
改めまして、権利元様とご支援いただきました方々に、お騒がせしてしまい誠に申し訳ありませんでした。
今回は有料サイトでの公開ということで同人誌との扱いは違うかもしれないが、二の足を踏む同人作家も増えそうな事案である。同人誌の場合、頒布までの手間があるためお目溢しをもらえるのではないかと言う見方もあるが実際はわからない。危ない橋は渡りたくないのが当然の心理なので、萎縮はしてしまう。ガイドラインとしては全ての二次創作を禁止しているようだ。建前上、二次創作を認めることはしないのが通常である。
Q.円谷プロ作品を元に自分でイラストや動画、書籍、レプリカなどを作成し、インターネットや同人誌、イベントなどで公表しても良いでしょうか?
A.弊社が許諾していない限り、公表いただく事はできませんのでご了承ください。
以前の性的な表現を制限する目的で警告を出したウマ娘とは違い、グリッドマンに関しては単純に営利目的で自社のコンテンツを利用するのを禁じる目的で警告がなされたと見られる。ファンアートととしてであり、営利目的でなければ実際問題警告がなされることはあまりないのでは。
なぜ円谷プロダクションは著作権に厳しいのか
『SSSS.GRIDMAN』は円谷プロダクションが『電光超人グリッドマン』という作品の版権を貸し与えて制作されている作品である。TRIGGER制作の実際のアニメを見る限り、あまり二次創作を制限しようという考えは感じ取れない。前回は明らかに同人誌的展開を示唆しているような内容で、公式が歓迎している感すらある。
実際の制作陣はどのように考えているかはわからないが、少なくとも版権元の円谷プロダクションは著作権に関しては厳格な姿勢を持っている。なぜ厳しくなったのかという理由には過去の苦い経験があると思われる。
ウルトラマン訴訟
ウルトラマン訴訟とはタイのチャイヨー・プロダクションに対し、日本の円谷プロダクションが作品の海外利用権を巡り起こした訴訟である。
1976年にチャイヨー・プロダクション代表のソンポート・センゲンチャイ氏が当時の円谷プロダクションの代表であった円谷皐氏と海外利用権に関する契約を交わしたと主張し、チャイヨーにウルトラマンの海外利用権があるとしたことに端を発している。
自由に作品の海外展開ができない状況に追い込まれることになる円谷プロダクションとしては当然海外利用権を認めたくはない。もちろん本当に契約が交わされていたのであれば、チャイヨー側に権利が認められるのだが、契約書が偽造されたものである可能性があり、この契約書が有効なのかどうかが争点になっている。
この作品の利用権を巡る裁判は各国で行われており、2004年には日本国内の判決において契約書は有効であるという判決が出された。しかし、タイでは2008年に契約書は無効であるとの判決が出され、円谷側の主張が認められている。2018年4月18日にはアメリカの地裁において円谷側の主張が認められるなどこれは現在まで尾を引く問題になっている。
このような経緯があるので、円谷プロダクションは著作権に関しても厳格な姿勢を維持しているのだと思われている。
今回思うこと
私個人の意見としては二次創作を制限することはあまりしてほしくはない。実際大きな問題にすることは稀であるかもしれないが、現在は二次創作文化が育っており、これを制限することは大きな反発を招きかねない。もちろん公式がダメだと言えば、引き下がるしかないのが二次創作というものなのだが。
今回警告を受けた作家もその筋では名の知れた人であるので、この業界の流儀には詳しいはずであり、特に大きく問題にするようなことはないと思うのだが、ファン層がどう思うかが気になるところだ。二次創作が作品自体の盛り上がりを担っているという考え方はたしかに存在する。
二次創作は公式のお目溢しによって成り立っているものであり、それを忘れて営利目的に走りすぎれば大きなしっぺ返しを食らう。二次創作全てがいけないということでは決してないが、節度を守って楽しんでいくことが重要だろう。
【追記】公式ガイドライン公開
あまりにも騒ぎが拡大してしまったためか『SSSS.GRIDMAN』の公式サイトにガイドラインが掲載されることになった。
『SSSS.GRIDMAN』二次創作物のガイドラインに関して
『SSSS.GRIDMAN』の二次創作物について、現在多数のお問い合わせを頂いております。
GRIDMAN製作委員会として、本作品の二次創作物については、下記のガイドラインに沿って
対応をさせて頂いております。
なお、本件に関して個別でのご質問などはお答えできかねる場合がありますので、何卒ご了承ください。
■『SSSS.GRIDMAN』二次創作物のガイドライン
・素材の利用に関して
本作品の画像、映像、ロゴ、音楽、シナリオなど作中の素材をコピー、トレースして使用することを禁止します。本作品を参考に新規に制作された二次創作物(イラスト・漫画・小説など)についてはこの限りではありません。・二次創作物の制作・頒布に関して
上記「素材の利用について」に則って、制作・頒布してください。但し、公序良俗に反するもの、他者の権利を侵害するものなどは禁止します。・同人商品に関して
営利目的・商業目的での商品制作、頒布など、同人活動の範疇を超えていると判断したものは、販売差し止めなどの対応を行う場合があります。・個別の二次創作物に関して
個別の二次創作物に関するお問い合わせにはご回答・ご対応できかねます。悪しからずご了承ください。
『SSSS.GRIDMAN』二次創作物のガイドラインに関して | SSSS.GRIDMAN
これを見る限り特別厳しいというわけではないようだ。一般的な二次創作の活動については特にあれこれ言うつもりはないと見ていいだろう。以前の警告は有料サイトという営利目的としか思えない形での利用だったので行われたのではないだろうか。
今回の騒ぎは同人活動を行っている作家を忌避する人々に踊らされてしまったというのが真相だと私は思っている。現在はやはり警告されたことを受けて、二次創作活動が萎縮している傾向が見られる。公式側としてもまさかここまでの騒ぎに発展するとは思わなかったのだろう。今回常識の範疇での二次創作活動であれば認められるというお達しが出たので、ファンなのであれば萎縮することなく活動してほしい。